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2012/04/06

On the Beach (Penguin Readers Lv.4)


ON THE BEACH (Penguin Readers (Graded Readers))
著者: Nevil Shute
語数:32,655
読みやすさレベル:4.0
評価:★★★☆☆

あらすじ:戦争で核爆弾が各地に投下され、世界中に放射性物質が風で拡散されていく。北半球は既に絶滅し、いまや、オーストラリアのみが残っている。しかし確実に迫ってくる放射線による死。最後の日々を人々はどのように生きるのだろうか。


感想:この表紙を見て、私はシュワルツェネッガー的アクションSFだとばかり思っていました。しかし一向に爆発等派手なアクションは起こらない。

前半はHolmsやTowersなど海軍のミッションを描き、徐々に世界の機関が機能を失っていくに連れ後半は登場人物たちの関係、最後の生き方が中心に描かれている。

戦争は既に終わり、既に死の宣告がなされている。確実に来る滅亡。しかし静かな文章が続いていく。自分の死ぬ時がいつなのか知っている。どんなふうに死んでいくのかも知っている。どうしても逃げられない。人はいつかは死ぬものだけれど、こんな時、どのように最後の時を過ごすだろう?

作品中で人々は各々の最後を迎える。
既に大気も汚染されて危険なのに、ミッションを放棄して故郷に残った海軍隊員、好きなレースを行なって、レース中に死んでしまう人、そしてそれを良しとする家族、息子に手紙を残して死んでしまう母親…。

この作品(原作)は1957年という核戦争が現実的に感じられたであろう冷戦真っ只中に出版された。けれど、核や放射性物質に対する恐怖は未だに…いや、今の私達にとってはやはり身近な恐怖として存在している。
汚染されていて自分の命もそこにいたら数日しか持たないと知っているのにミッションを放棄して故郷に帰ってしまう海軍隊員のエピソードを読みながら、去年の原子力発電所の事故のせいで家に帰れない人のことを思い出し、切ない気持ちになりました。